当初、2010年2月18日にUPした記事ですが、目に触れやすいように時々UPしてみます。新しいことを書く時間がないのもありますが(汗)

先般、下記の提案をしていましたが、その後JRAは2011年度から「五重勝単勝式」馬券の発売を発表、的中者がいない場合はキャリーオーバーさせるとの報道がありました(昨年11月)。それで、表題について再検討したいと思います。

<【JRAへの提案】特払いを廃止し、キャリーオーバー制を導入してはどうか 2009.5.23>

 たまに説明書きを見つける「特払い」。これはすなわち、「式別毎に勝馬投票の的中者がいない場合には、競馬法第8条の規定により、その式別に投票した購入者全員に対して、特払いとして100円につき70円の払い戻しを行うこと」をいいます。現在の中央競馬では購入者が多いためほとんど行われることはありませんが、海外で発売されている5連単や5連複、6重勝など、難易度の高い馬券を将来的に発売することになれば、発生率は高くなっていくと思います。

 でも、実際これが行われた場合は自分の予想は外れていて、しかも結局はマイナス収支となるのですから、私たちはそれほど嬉しいとは感じないと思います。この部分の上積みを他のレースの配当に回す、いわゆるキャリーオーバー制にしたほうが面白いのではないでしょうか。

 JRAは最近、「JRAプレミアム」(対象レースにおいて、通常の払戻金に「売り上げの5%相当額」を上乗せして払い戻しするもの)や「JRAプラス10」(通常の払戻金が「100円元返し」となる場合に、10円を上乗せして110円で払戻しするもの)を実施しています。つまり、個々のレースや馬券種によって控除率が一定である必要はないということです。

 キャリーオーバーするなら、単純に次の週とかよりも競馬界的に注目度の高いレース、例えば春なら日本ダービー、秋なら有馬記念に集中的に行う(日本ダービーは競馬関係者の夢ですから、ファンとしてもより夢を追える状況になることが望ましく、有馬記念は有名なレースでボーナス後なのでJRA的にも都合が良く、有力古馬が引退レースに使うことも多いので、理にかなっています)。キャリーオーバーが多い場合には、控除率がマイナスからプラスになる可能性もあります。そういう状況になったら、以前totoBIGで盛り上がったように、マスコミが注目してくれて、普段競馬をしない人も馬券を買ってくれる可能性が高いのではないでしょうか。

 実際のところ、このブログでも色々と書いてきたように、馬券が当たらなければ配当は得られないので控除率などあまり関係はないのですが、競馬を単純なギャンブルと考えている方々には、「期待値」は競馬をやらない大きな壁となっているように感じられます。そういう方々には素直に「期待値」を誘因としてみましょう。

 毎年、日本ダービーと有馬記念だけはお徳だから馬券を買ってみる、ただそれだけのきっかけから、競馬に興味を持ってもらい、近頃の競馬場の豪華さ、綺麗さを知ってもらい競馬のイメージを変えていくことができるかもしれない。

 思い出の馬ができ、競馬新聞を一通り読むことができるようになり、予想の奥深さに熱くなってくれるかもしれない。

 1頭の馬を取り巻く関係者(馬主、調教師、騎手など)の存在と情熱、日本競馬の歴史、サラブレッドの歴史、数々のドラマを知ってもらい、ひとつのレースを見て涙を流してくれるかもしれない。

 特払いは競馬法に規定されているし、他の公営ギャンブルとの並びもあるでしょうから、変更するのは難しいとは思うのですが、検討の余地は十分にあると思います。次の馬券の導入よりも先に手を打ってほしいところですね。

しかし、今回の報道によると、キャリーオーバーは法令に従い次の五重勝の機会に対して行うとのことでした。以下、競馬法を抜粋しました(下線はスカイポット注)。

(勝馬投票法)
第六条  勝馬投票法は、単勝式、複勝式、連勝単式及び連勝複式(以下この条及び第十二条第四項において「基本勝馬投票法」という。)並びに重勝式(同一の日の二以上の競走につき同一の基本勝馬投票法により勝馬となつたものを一組としたものを勝馬とする方式をいう。以下同じ。)の五種類とし、勝馬投票法の種類(重勝式勝馬投票法その他農林水産省令で定める勝馬投票法については、当該勝馬投票法ごとに農林水産省令で定める種別。以下同じ。)ごとの勝馬の決定の方法並びに勝馬投票法の種類の組合せ及び限定その他その実施の方法については、農林水産省令で定める。

(払戻金)
第七条  日本中央競馬会は、単勝式勝馬投票法及び複勝式勝馬投票法の勝馬投票の的中者に対し、当該競走に対する勝馬投票券の売得金(勝馬投票券の発売金額から第十二条の規定により返還すべき金額を控除したもの。以下同じ。)の額を勝馬投票法の種類ごとに区分した金額について、付録に定める第一号算式によつて算出した金額から付録に定める第二号算式によつて算出した金額を控除した残額に付録に定める第三号算式によつて算出した金額を加えた金額を、当該勝馬に対する各勝馬投票券にあん分した金額を、払戻金として交付する。
2  日本中央競馬会は、連勝単式勝馬投票法、連勝複式勝馬投票法及び重勝式勝馬投票法の勝馬投票の的中者に対し、当該競走に対する勝馬投票券の売得金の額を勝馬投票法の種類ごとに区分した金額について、付録に定める第一号算式によつて算出した金額から付録に定める第二号算式によつて算出した金額を控除した残額(重勝式勝馬投票法において第九条第一項又は第三項の加算金がある場合にあつては、これに当該加算金を勝馬の数で除した金額を加えた金額)を、当該勝馬に対する各勝馬投票券にあん分した金額を、払戻金として交付する。
3  前二項の規定により払戻金を算出する場合において、勝馬投票の的中者のない勝馬があるときは、その勝馬は、その算出については、勝馬でないものとする。
4  前三項の規定により算出した金額が、勝馬投票券の券面金額に満たないときは、その券面金額を払戻金の額とする。

第八条  勝馬投票の的中者がない場合(次条第一項に規定する場合を除く。)における売得金は、その金額からその金額に百分の十五から百分の二十までの範囲内で農林水産大臣が定める率を乗じて得た金額及び付録に定める第二号算式によつて算出した金額を控除した残額を、出走した馬であつて勝馬以外のものに対し投票した者に対し、各勝馬投票券にあん分した金額を、払戻金として交付する。

第九条  重勝式勝馬投票法の種別であつて勝馬の的中の割合が低いものとして農林水産省令で定めるもの(以下この条において「指定重勝式勝馬投票法」という。)についての勝馬投票の的中者がない場合における売得金は、その金額からその金額に前条の規定により農林水産大臣が定める率を乗じて得た金額及び付録に定める第二号算式によつて算出した金額を控除した残額を、当該指定重勝式勝馬投票法と同一の種別の指定重勝式勝馬投票法の勝馬投票であつてその後最初に的中者があるものに係る加算金とする。
2  指定重勝式勝馬投票法について、第七条第二項の払戻金の額が農林水産省令で定める払戻金の最高限度額を超えるときは、その最高限度額に相当する額を払戻金の額とする。
3  前項の場合における払戻金の最高限度額を超える部分の第七条第二項の払戻金の額の総額は、当該指定重勝式勝馬投票法と同一の種別の指定重勝式勝馬投票法の勝馬投票であつてその後最初に的中者があるものに係る加算金とする。
4  指定重勝式勝馬投票法の実施を停止する場合における第一項及び前項の加算金の処分については、農林水産省令で定める。

ということで、既に法律で次の機会にキャリーオーバーするよう決められてしまっています。ちょっと、時すでに遅しだったかという感じですね。

ただ、競馬を深く楽しめるファンを増やしていくためには、ギャンブルやオッズや数字ではなく(無論、入り口はこういった射幸心から興味を持って頂くのが自然ではありますが)、人間と馬のドラマやロマンを伝えていくのが結果的には一番効果的だと思います。

それを伝えるのに最適なのが、競馬関係者が究極の目標とする日本ダービー、そして、歴戦の名馬の多くが引退レースに選ぶ有馬記念です。

ここにキャリーオーバーを集中投下させることで期待値が上昇し、期待値プラスが見込まれるようになれば、競馬に興味のなかった一般人を取り込むことができ、間口を広げることができるとともに、玄人は期待値が高いがためにその分掛け金を多くするため、JRAの売上げもかなり上昇するはずです。

期待値が高すぎて射幸心を煽るという考え方もあるかもしれませんが、お金持ちの玄人が大量に購入するため結果的に期待値は薄く修正されていくはずであり、それがJRAの売り上げになるのですからJRAにとってもファンにとっても素晴らしいことです。

現在、バンクーバーオリンピックが開催されていて、オリンピックを目標に4年間技術を磨いてきた方々が注目を集め、そのドラマが人々を感動させ、元気を与えてくれています。

ひたすらスポーツの技術を磨いた方が社会の役に立っているのだとすれば、競馬ももっと社会的に注目を集めて、関係者の努力を知ってもらい、ドラマや元気を与えることで貢献できるのではないかと思います。

競馬を広げていくには、入り口は単なるギャンブルであっても、その先のドラマをより身近に伝えられる環境を作らなければなりません。

日本ダービーと有馬記念は、日本競馬界が築き上げてきた至宝とも言うべきレースであり(こういう機会があることは、他のただの繰り返しのギャンブルとは異なる、競馬がリードしている点です)、JRAやマスコミの方に特集を組んでもらって社会の注目を集めていき(需要も増えるはず)、将来的に競馬を日本の年2回のお祭りにしていくことも可能ではないかと考えます。

今まで競馬に興味のなかった方が職場の競馬ファンの方に「今年の有馬記念はどうかね」と訊ねて競馬ファンの面目躍如、というシーンもよくある光景になれば、競馬ファンとして嬉しいですね。

※なお、法令の構造上、特払いの廃止ができないのであればそこにはこだわりません。今後の新馬券(4連複、5連単等)及び五重勝のキャリーオーバーだけを対象とすることで問題ないと思います。しかしながら、同じ馬券種にしかキャリーオーバーできないとすると面倒なので一括して特払いを廃止して政省令で指定する方法でキャリーオーバーさせるとするのが良いのかなと思います。

※私案では、前年10月から3月のキャリーオーバー積立を日本ダービーへ、4月から9月のキャリーオーバー積立を有馬記念へ集中投下と考えています(会計年度を考慮して若干変更)。

この案に同意頂ける方は、是非下の「拍手」ボタンを押してください。より良い改善案等がある方はコメント頂ければありがたいです。今回は、ある程度反響があるようでしたらJRAにちゃんとした要望(提案)書を作って送ってみたいとも思っています。
本文に関係のあるトラックバックやリンクも大歓迎です。たくさんの競馬ファンがこれは面白いと思って頂けるようなら、働きかけが現実化につながる可能性もあるかもしれないと思います。リンクの場合は是非コメントやメールをください^^

2011年02月24日