本書は“(元)崖っぷちジョッキー”として知られる谷中公一氏の著作である。冒頭の自身の引退の理由をはじめ、競馬関係者でなければわからない話がたくさん記載されていて興味深い。何よりも、氏の競馬界を良くしていきたい、もっとファンに情報を公開すべきだという姿勢に情熱が伝わってくる。
馬券に直結する知識という面では、この本を最初に読んだ時から、「ダートコース調教馬は調子が悪い(可能性が高い)」という箇所が記憶に残った。谷中氏はある公開調教時に一般ファンから、いつもウッドチップで追い切られている馬が今日はダートコースで追い切られたことの理由を尋ねられ、自身にとって当たり前すぎることであり言葉に詰まったそうだ。
「いつもウッドチップで追い切っている馬が、なぜ今回はダートで追い切ったのか。それは僕にとって、子供の質問に似ていた。とっさに、こう答えた」
「調教師や助手なりが、『この馬は調子を落としている』と判断したからです」(中略)
「いつもより軽く追い切った馬は、調子を落としている。これは事実だが、例外もある。例外その1は「中1週」だ。(中略)例外その2は「中2週」。…(補足説明)」
(『ファンが知るべき競馬の仕組み』谷中公一)
このことを知ってから、調教欄でダート追い切りをかけている馬がいないかを注意して見るようになった。コラムで書くのは今回が初めてだが、数年前から予想でも取り入れていて、実際、ダートで追い切りしているという理由で「調子が良くなさそう」と軽視していく方法は結果にもつながった。私の記憶では、ダートコースでの追い切りを多用していたのはエフティマイア。桜花賞(2着)で復活するまでの不調期にダートコースでの追い切りが多かったはずだ。
ただ、ダートコースでの追い切りは基本的に美浦やローカルで行われており、ローカルはウッドチップコースがないため、実際の予想での使用頻度は高くない。ご参考まで。
2010.03.28