そもそも、予想実績を客観的に示す尺度に「的中率」と「回収率」しかないというのは、予想そのものの文化的未熟さを示しているのではないだろうか。

「的中率」は、予想における買い目において、ひとつでも当たりがあれば「的中」とカウントされるものである。収支がプラスであることを問わないので、極論を言えば、10000円を購入してそのうち1.1倍の100円の複勝が当たっても的中率は上昇することになるし、出走馬全ての単勝を買えば的中率を100%にすることができてしまう。従って、的中率の高さのみで予想力ははかれない。

一方、「回収率」にしても、100レース予想してそのうちの1Rだけ的中してプラスを達成したようなケースを想定すると、たまたま当たっただけかもしれずその人の予想力が反映されているかについて疑問が残る。

予想は儲かれば良い、という考え方のみであれば、あるいは回収率基準は機能していると言えなくはないが、予想芸術化の観点を持てば、予想者のレースの見立ての精度は求められるべきであり、検討違いの見立てばかりをする(的中率の低い)予想者は評価されるべきではない。

また、回収率至上主義を採れば、大きな配当が得られた都合の良い期間をピックアップして予想巧者であることをアピールすることが容易となってしまう。

以上のことから、既存の「的中率」と「回収率」は予想力を示す基準として一定の機能はしているものの、一見して予想家の予想力を判断できる客観的な基準までには至っていないのではないか。これまでは、それゆえに予想の芸術性は予想文で評価されるものとして、予想を公開した上で、フィギュアスケートの審査員による技術点と演技・構成点を分けた評価の仕組みのようなものを作ってはどうかと考えたこともあるが、既存の「的中率」と「回収率」を一定の基準で細分化することで、機能の改善、向上が見込めるのではないか。

的中率は、点数を絞って高配当を得ても、掠った程度の取り紙でも、同じ評価をされていまうのが課題である。また、的中率は本来予想の堅実性を担保するための指標であることを踏まえると、取り紙になるような的中の水増しを明らかにするような指標を作れば良いと考えられる。

回収率は、まぐれ当たり的な少数の的中にも影響を受けやすいことが課題である。従って、回収率の高い一部のレースを除いた場合に、どれだけ回収率が落ちてしまうかを明らかにするような指標を作れば良いと考えられる。

以上の検討により、下記のとおり提案する。

・的中率を、課題を踏まえ以下のとおり分割して表示する
「増益的中率」…回収率100%超となったレースの割合
「返戻的中率」…回収率75%超~100%となったレースの割合
「減益的中率」…回収率0%超~75%となったレースの割合

・回収率を、課題を踏まえ以下のとおり分割して表示する
「単純回収率」…従来の「回収率」
「保守回収率」…回収率の高いレース順に並べて、予想数の上下1%(繰上げ)ずつを削った上で計算される回収率
「堅牢回収率」…回収率の高いレース順に並べて、予想数の上下3%(繰上げ)ずつを削った上で計算される回収率

(従来の「的中率」は「増益的中率」、「返戻的中率」、「減益的中率」の合計で認識可能)

これらの値を見ることで大体どのような予想をしているかがわかるし、もし更に1つの基準を設ける必要があるのであれば、それぞれの項目別に一定のレートを掛けて足し合わせ、「予想力」を求めればどうか。

これによって、予想力の評価をより正確に示すことが可能となると考える。

2012年02月10日