私は2003年に「予想真髄」という文章の中で、的中もあれば不的中もあり、その根拠について様々なことが言える予想には壁があること、しかしそれを乗り越えるためには予想の地軸を持てば良いことを主張しました。それを書いた当時は自分が正統派になるとは思っておらず、データ予想家の視点でその評価軸を模索していまして、現在では役に立たない記述もありますが、最後の“予想の階段”など、今でも十分読めるものだと思いますので、未読の方はご確認ください。

 その後、私は馬の個体能力を天星指数という全く独自の指数を作成してデータ以外から自分の予想の地軸を手に入れ、ゆっくりではありますが、予想理論を進化させてきました。どういう条件で馬の能力が変化するのか、若駒戦で重要となる2戦目での上積みリスクや、重馬場で好パフォーマンスを出したとしても信用できない重馬場リスクなどの各種リスクも指数があっての発見でしたし、スローペースや中弛み等の展開、コースロスやバイアスの条件がレースに与える影響も計算することができるようになりました。そのひとつの結果が、年始にお送りしているクラシック有力馬のレポートです。

 PRETでは、各種分析において種牡馬のSHP傾向を明確にしたり、騎手のコース別の巧拙を示すことによって、それらが指数にどう影響を及ぼしているかを確認してきました。また、第一期からの課題である上積みリスクについても、種牡馬や調教師の切り口から研究を行います。自分の指数自体もまだ完成形ではありませんが、1400m~1800mでは業界中最高峰のレベルに達していると自負しています。馬流天星の予想理論は、天星指数にナビゲートして貰っているというのが実態であり、それの持つ可能性から、まだまだ進歩させることができると考えています。

 情報発信者が予想を成長させることができるか(将来性)を示すためにも予想の評価軸は必要ですし、短期的に予想を参考にする読者も予想者のインスピレーションだけに頼るのでは心許ないでしょう。

 ここでもう一つ触れておきたいのが、天星指数における「短期的能力固定理論」です。

 これも指数管理を行う中で発見した事象ですが、私の指数理論はそれぞれの馬の能力が基本的に2戦目で短期的に固定すると考えます。新馬戦は、初めてのレースということから、騎手たちも無理せず一緒に走らせることに専念するため、特に距離がマイル(1600m)以上のレースはスローペースになりがちであり、馬の本当の力が出ていない場合のほうが多いため。もちろん、若駒ですから2歳の夏から3歳の春までの間は見た目でも成長するでしょうし、例えばタップダンスシチーのような晩成型の馬は、年をとってから能力が高くなっていると考えられますから、能力がたかが2戦目で決まるなどということはナンセンスと感じられると思います。しかし、指数の動きを見ていると、3戦目以降で指数を急激に伸ばす馬は実はあまりいません(おそらく、周りの馬も同じように成長するので、目立たないのでしょう)。例外は、上積み警戒種牡馬と呼んでいる種牡馬の産駒(特にキングカメハメハ産駒)くらいです。だから、急成長するかもしれないと警戒して予想していくよりも、能力は固定するとして予想していくほうが効率的なのです。もちろん、急激な良化(指数の上昇)があることは確認していますし、晩成馬を理解するにはその馬が他の馬より大きく成長している事実があるはずと頭では整理されますので、「短期的」と命名させていただいています。

 予想がやりやすくなると言うのは、例えば、キャリア2戦目で指数1800m64級を出したセイウンビバーチェと、同じく指数1800m63級を出したケイアイヘネシーが対戦する時に、他の条件が同じであると思える場合、指数が高いほうが強い(セイウン>ケイアイ)と決められるところにあります。1ポイント差では心許ないですが、これが2~3ポイント差になってくれば、1着と2着を選り分けて、より配当の高い馬単や3連単などを馬券として使うこともできるようになってきます。この2頭のうち、セイウンビバーチェはその後不調期に入ってしまったのですが、2歳時までは指数通り札幌2歳Sを好走し、黄菊賞4着、エリカ賞4着など一定水準の成績を収めました。また、ケイアイヘネシーは人気が落ちたあけび賞で大穴を開けると、若駒S、共同通信杯、すみれS、ベンジャミンSまで毎回2000m62~63級の能力で走り続けました。ケイアイヘネシーは毎回人気も着順もバラバラで、馬柱を見た限りではいつ走るのかわかりにくい馬ですが、能力固定として見ればメンバー中での指数が高いときに来て、低い時に消えている安定型でもあるのです。この、メンバー中での指数順位というのも面白いもので、指数トップの馬はそのレースで強い競馬を見せることが多いのですが、それが例え同じ馬であっても、メンバー強化して指数順位が落ちるレースになった途端に、驚くべき脆さを見せて惨敗することがよくあります。馬柱が1着ばかりの馬が、突然惨敗している時はほとんどこのケースですね。(例えば、第一期のミスターケビン、オールインサンデー)

 アナログを用いて競馬をしていない方は、自分が軸とした馬が4角で見せ場なしに終わってしまうことがままあると思います。そしてそれを、別に不思議じゃないことだと思っているのです。「所詮は生き物が走るものだしその日の調子もあるし、ギャンブルだから全くの的外れになることも普通のことだ」と。私も昔そう思っていましたし、アナログを始めた当初も、指数がトップでも走る気がなかったり、調子落ちしたりする場合には、指数分走らないこともたくさんあるのではないかと思っていました。もちろん、全て指数通りになることもないですが、アナログを見出すと、そこら辺の感覚がかなり変わってきます。「強い馬が見せ場なく終わることはまずなく、来なかったら能力やリスクの見立てや条件・展開面で予想が不十分だった」と思えるようになります。この過程は今後競馬を楽しむ土台となりますので、是非体得されて頂きたい部分です。

 指数断然の馬が惨敗したとしたら、何か他の影響からのものです。例えば、2004年10月30日のマチカネオーラの勝った未勝利戦は、事前に把握していた指数のトップはセンカクという馬で、近い2番手にマチカネオーラがいて、その下が4,5ポイント離れているレースでした。しかし、指数トップのセンカクは6着に負け、マチカネオーラが勝ち上がりました。この時、メルマガで私は「センカクが大敗した理由はわかりません」と回顧しました。しかし、その後の府中開催を見ていくにつれ、異常な内バイアス(内が伸びやすく外が伸びにくい馬場状態)が発生していることがわかりました。センカクは外を回っていましたので、それが敗戦理由だったことと整理できます。ただの言い訳でないことは、翌週の天皇賞秋の結果を見ていただいてもわかると思いますし、このバイアスを徹底的に意識したことにより、2週後の京王杯2歳Sで17万馬券を的中できたことからも明らかだと思います。この例のように、能力を固定として見ていると、結果に影響を与える条件の変化にも気づきやすくなります。

 馬の調子や勝負度合い(仕上げ具合)が関係ないというわけではありません。しかし、若駒戦の目標レースは非常にわかりやすいもので、それなりのレベルの馬にとってはクラシックレースになりまして、そこに向けてのローテーションが組まれます。余程下手な調教師でなければ、クラシックに向けて馬を仕上げるので、予想側はある程度信じて良いでしょう。多くの馬主はクラシックレースを戴冠する夢を持っているため、調教師は通用しないと思ってもできるだけ本賞金を積み、出走権を掴むための努力をすることになります。長期休養明けの馬も出現しにくいですし、降級のためにヤラズがあるのではないかと頭を悩ませる必要もありません(これらは古馬戦を予想する上ではとても重要な視点になっていくと思われます)。

 若駒戦を予想していても、指数が一度落ちて全く上がってこなくなる馬もいます。例えば、第一期であればセイウンビバーチェ、ケイアイブーケ、最近の第三期ではシャルマンレーヌ、トップコメットなどが思い出されます。性能とコース相性もあるでしょうが、さしたる敗因がなく一度大きく指数を下げた馬はその後軸の信頼をしないほうが良いでしょう。

 そうは言っても、馬の調子の影響も散見されていますので、それは調教分析などで今後開拓しなければならないことだとも認識しています。

2007年頃記載