前回までに、能力の診断方法・予想観点には、大きく分けて、

1.タイム(A.全体の走破時計や、B.上がり3ハロン(最後の600mのこと)の時計)の速さ
2.展開・ラップ
3.相手関係

などがあるとご紹介し、1.のタイム(A.全体の走破時計)について、

a. 競馬場やコースによって時計の出方が違うこと
b. 同じ競馬場やコースでも、降雨の影響や開催時期によって時計の出方が違うこと
c. 同じ競馬場やコースでも、道中のそれぞれの馬の位置取りによって時計の出方が違うこと

を留意する必要があること、そのうちのa.についてお話しました。

今日は、1.-A.-b.以降についてご説明します。

まず、「b. 同じ競馬場やコースでも、降雨の影響や開催時期によって時計の出方が違うこと」ですが、同じ競馬場やコースでも、雨が降って地盤が緩めば、走破時計は遅くなることはご理解頂けると思います。硬いアスファルトを走るのと、泥でぬかるんだ地面を走るのとでは、後者が遅くなりますよね。

そして、同じ競馬場やコースでも、開催が進んでいくにつれ、馬が走ることの多い内側から、馬場が荒れて時計がかかる(遅くなる)ようになっていきます。

例えば、夏の小倉開催では、開幕前半に好時計で勝利した馬が、直行した重賞で、開幕後半にそれほど速くない時計で勝利した馬に負けることがあります。これは馬場適性の影響もあるとも考えられますが、徐々に時計がかかるようになる影響を知れる好例でしょう。

「c. 同じ競馬場やコースでも、道中のそれぞれの馬の位置取りによって時計の出方が違うこと」は、距離ロスを説明する際に詳述しますが、コーナーの位置取りによって、各馬が実際に走る距離が異なってしまい、走破時計にも影響が出てしまうという留意点です。

先日例示した、カール・ルイスは100mですが、ウサイン・ボルトは105m走らなければならない、というケースで、ウサイン・ボルトの走破時計は100mを走る時よりも当然遅くなります。

このように、全体の走破時計は様々な影響を受けてしまっており、能力の秤に使うのは危険であることがわかるでしょう(距離が延びれば、後ほど紹介する展開にも大きな影響を受けます)。

しかし、その一方、同じレースで同じコース取りをしていれば、順位付けを行うことができるということも言えます。更に、a~cの影響の大きさを測ることができれば、それらを補正した上で同じ土俵に乗せて能力を比較することができると考えられます。

この考え方が、スピード指数等の、能力ベースの予想の発展の歴史であり、競馬場別・開催別の時計差を足し引きする「基準タイム」という概念を作ったり、外を回してロスをした距離を推測してそれを差し引いた走破時計を計算したりといった方法が採られています。

次回は、引き続き診断方法・予想観点、1.-B.のご説明をします。

2011.06.29