今回は能力の診断方法・予想観点から、②展開・ラップについてお話します。

展開については既に前回で触れています。距離が長くなると、道中のペースが遅くなり、競走馬の能力は末脚の速さに凝縮されるといった話ですね。この考え方により、能力診断においては、スローペース下では上がり3ハロンの時計が重要になると理解して頂ければと思います。

また、逆パターンとして、ハイペースを先行した馬は、あまりに速い展開の場合はバテてしまいパフォーマンスが急落しますので、こういった場合にも、走破時計をそのまま能力と捉えることができません。

この調整は難しいのですが、ビギナーの方は、前走でハイペースを先行して失速している馬を見つけたら、そのレースは一旦除外して、更に以前のレースでのパフォーマンスを参考にされることをおすすめします。

さて、展開を把握するためのツールとして便利なのが「ラップ」です。ラップとは「出走馬中、先頭の馬が200m毎に刻んだラップタイム」のことで、私たちがマラソンで、1キロ毎にかかったタイムを計時するのと同じ要領です。

例えば、2011年の日本ダービーのラップは下記のとおりです。

12.7-11.3-12.8-13.1-12.5-13.0-13.2-12.8-12.6-12.3-12.2-12.0

言葉で表せば「先頭の馬は最初の200mを12.7秒で走り、次の200mを11.3秒で走り、次の200mを12.8秒で走り、…(省略)…、最後の200mを12.0秒で走った」という意味になります。文章で書けば大量な情報が、数字だけでコンパクトにまとめられており、慣れてくればとてもわかりやすいものです。2011年のダービーは不良馬場でしたので、全体的にラップタイムが遅くなっています。

レースの上がり3ハロンは上記数字の右の3つを合計した36.5秒となります。ただし、上がり3ハロンの数値は、それぞれの馬について公開されていますので、能力診断においては、各馬の値を使用するのが一般的です。

続いてご覧頂くのは、2010年の日本ダービーのラップです。

12.6-11.3-12.2-12.7-12.8-13.5-13.1-12.9-12.4-11.3-10.8-11.3

2011年と比べて、レース中盤がとても遅くなっていて、ラスト3ハロンが極端に速くなっているのがわかりますでしょうか。これが(超)スローペースです。このレースは極端な超スローペースなので、単純に前残りとはならず、末脚の加速が速い馬が上位に入りましたが、一般的にはスローペースでは先行馬が残りやすくなります。

次に、2004年の日本ダービーのラップをご覧ください。

12.5-10.6-11.3-11.5-11.7-11.8-12.5-13.0-12.5-11.5-11.7-12.7

この年は、前半の流れがずっと速かったことがわかると思います。そのため、先行馬が総崩れを起こし、後方に待機していたハーツクライが2着、キョウワスプレンダが4着に入りました。勝ち時計2分23秒3は、ダービーレコード。ハイペース下では全体の走破時計も速くなる傾向があり、走破時計を評価するにあたって、ハイペースである時には展開の恩恵があっての数値ではないかを留意する必要があります。

ちなみに、2500mのような、200m刻みだと100m余ってしまうレースのラップは、余りの100mのラップを頭に記載します。

(参考)2006年の有馬記念のラップ
7.1-11.5-11.4-11.3-11.8-12.8-12.9-12.7-12.2-12.8-12.2-11.2-12.0

各馬の全ラップタイムの公表はまだされていません。それがあればより精度の高い能力診断ができるので、早く実現してほしいところです。

2011.07.01