今回は能力の診断方法・予想観点から、2.展開・ラップについて書いたことの補足をしておきたいと思います。

はじめに、以下の2つのラップをご覧ください。

A.7.2-11.6-11.8-11.7-12.2-12.7.12.8-13.1-11.8-12.3-12.4-11.8-12.2(2.33.6)

B.7.0-12.2-12.2-12.7-13.0-13.4-13.1-12.0-11.4-11.8-11.7-11.5-12.2(2.34.2)

これは、1990年の中央競馬最終日の有馬記念のラップと、同日の900万下条件戦・グッドラックハンデキャップのラップです。全体の時計が速いのはAですが、有馬記念のラップはBです。極端な超スローペースでなく、2クラス下の条件戦よりもG1の時計が遅いというのは珍しいため話題性があり、ご存じの方もいるかもしれません。

この2つのレースは同じ中山2500mで行われており、同日ですので比較上の馬場差はありません。更に、ラップを見た限りでは、有馬記念のほうがスローペースでレースが進んでいますので、これが全体の時計が遅くなった原因と考えられますが、後半6ハロンかけてはそれなりに速い流れとなっており、ラスト1Fでラップが減速しているため、余力はあまり感じられないラップにも見えます。

これを見て、Aの勝ち馬は、有馬記念に出ていたら勝っていた(オグリキャップよりも強い)と考えて良いのでしょうか?

机上の計算では、そうだと言ってしまえるかもしれませんが、私の経験では、実際にはそうはならないことがほとんどであり、単純な時計評価で測れない、レースごとの流れやプレッシャーが存在しているのではないかと考えています。

余談ながら、中央競馬の主要な中距離のレコードホルダーにしても、2歳の1800mはヒットメーカー(17戦2勝;現役(500万下))であったり、2000mはナイトレセプション(26戦2勝;抹消(500万下))であったり、3歳以上の1800mはダイタクバートラム(36戦8勝;抹消(OP))であったり、2000mはツジノワンダー(42戦6勝;地方(1600万下))であったりしますので、時計はむしろ邪魔なものという予想スタイルを採られている方もたくさんいます。

しかしながら、以前にお伝えしましたように、夏場の同日の小倉1200mのような条件においては、時計の速さは能力を測るツールとして活躍しますし、長距離やスローペース下では上がりの速さが能力測定に利用できます。その効果を認識しつつ、それを鵜呑みにしてはならない様々な着眼点があることを頭の片隅に覚えておいて頂くのが良いと思います。

ただ、もちろん時計重視よりも効果的な能力診断方法は、次の③相手関係になります。こちらについては次回、ご紹介します。

2011.07.05