馬の脚質の見方は予想側としては近走の道中の位置取り、私が利用しているのはBPRであるが、上位騎手はそれに構わず、乗り方を変えてくることがある。例えば、2005年の有馬記念でハーツクライに乗ったルメール騎手は、彼のそれまでの好走脚質(差し、追込)ではなく先行策を採ってディープインパクトを負かした。
 競馬は先行しているほうが勝ちやすいことをディープインパクトによって衝撃的に知らされた出来事であった。
 今日は、ペリエ騎手がそのあたりについてコメントしている文章を見つけたのでご紹介したい。

「競馬新聞なんかにもそれぞれの馬の脚質が書いてあるけど、それはあくまで過去の戦績から判断しているわけだよね。それで今まで結果が出ていたとしても、今回もそれがあてはまるとは限らない。」
「今の日本のレースは前にいたほうが圧倒的に有利。だから前に行ってもリズムを崩さずに走ることができる馬の場合は、前走で追い込んで勝っていたとしてもボクは比較的前につける。それは先行するレースが得意ということではなく、勝つためにそういう乗り方をするということ。」

 BPRは関係ない、と言っているのだ。しかし、過去に成績の良かった乗り方をトレースしてしまう騎手は多い。そのほうが、もし負けた時にもしょうがないと周囲から思ってもらえるからではなかろうか。競馬ファンは競馬新聞などから脚質を想定して予想しているから、想定外の乗り方をされると邪魔をするなと思ってしまうし、一部のファンからは非難の声が出ても不思議ではない。これを無視して自分の乗りたいように乗れる騎手はやはり成績の良い上位騎手に限られてくるだろう。
 外国人騎手、地方出身騎手、リーディング上位10位くらいだろうか。彼らの位置取りについては、柔軟に考えなければならない。掛かりやすいから先行できない馬なのかどうか、という着眼点が重要となる。ただし、ペリエ騎手は追い込み馬に乗っても策を打つ。

「では、追い込むレースしかできない馬の場合はどうするか。意外かもしれないけどスタートを決める。そうすれば、ほかの逃げたい馬や、先行したい馬たちはボクの馬より前に行くためにゲートを出てからダッシュしなければならない。
結果として前半から脚を使うことになるし、レース自体のペースも速くなる。~ごくごく簡単に言うとそういうことなんだ。」
(『野望ありマス』オリビエ・ペリエ)

 追込みは中弛み、すなわちテンのラップが速いレースで有利になるから、ペリエ騎手の言う作戦が通じるのであれば利に適っている。
 ペリエ騎手のような人気薄でG1を勝つような外国人騎手ら上位騎手には周囲からは見えない至高のテクニックがあり、やはり、外国人騎手(及び上位騎手)は軽視できないということだ。

2010.05.01