私は1998年の皐月賞で競馬の醍醐味を味わい、また、そこで優勝したセイウンスカイをその後応援した思い出があり、大袈裟な話ではなくそこから自分の競馬予想道が始まったことから、ことあるごとに私の皐月賞への思い入れの強さをお話してきました。
 その思いが前提にあったこともありますが、皐月賞は予想家にとって非常に価値のあるレースだと思うようになっています。

 競馬関係者の追い求めるタイトルは日本ダービー(東京優駿)であることは言うまでもありません。だけにその前に行われる牡馬クラシック第一冠・皐月賞への注目度も高いのですが、例年の傾向では日本ダービーの行われる頃には、皐月賞の結果を介してダービー馬の有力候補が高い精度で見出されています。日本ダービーの1番人気馬が(1992年~2011年の)過去20年で(13.3.2.0.0.2)の好成績を収めていることからもそれは明らかです。

 牝馬クラシックの桜花賞とオークスの結果の関係性は低く、桜花賞で見せ場なく惨敗した馬がオークスで一変するということは、フサイチパンドラ(14着→2着)、ダイワエルシエーロ(7着→1着)、ヤマニンアラバスタ(9着→3着)、チューニー(12着→2着)、チャペルコンサート(7着→2着)、ウメノファイバー(6着→1着)、リトルオードリー(9着→3着)等、ある種穴パターンとして定着しているくらいなのですが(ただし、阪神競馬場改装後は関連性が強まっています)、一方、牡馬クラシックの皐月賞と日本ダービーの関連性は高く、過去20年のダービー連対馬40頭中27頭が(3着の20頭中15頭も)前走皐月賞出走からのローテーションであり、ダービーを連対した27頭の皐月賞での着順は(9.3.5.2.0.8)と、皐月賞で力を示した馬が強いという数字が出ています。つまり、皐月賞が終われば日本ダービーまで見えてしまうというのが例年の傾向です(ただし、最近は皐月賞で凡走した馬の活躍例が増えています)。

 また、競馬関係者やファンに夢を与える言葉である「三冠」も、皐月賞が始まる前はそこに集う18頭に可能性が残されていますが、ダービーの前には皐月賞を勝った1頭にしか可能性がなくなってしまっています。ゆえに、皐月賞の直前が競馬関係者や競馬ファンの夢が最大になる極相で、ここで日本ダービーを含めた今年のクラシックの有力候補を予想することは刺激的な試みであり、価値ある仕事と思います。 

 皐月賞の馬柱は1,2着の記載が多いです。というのも、通常皐月賞に出走するためには、OPクラスになるまでの2勝、もしくは重賞2着、またはトライアルで好走しなければならないからです。皐月賞のトライアルは「弥生賞(3着まで優先出走権)」「スプリングS(3着まで優先出走権)」「若葉S(2着まで優先出走権)」と3つありまして、これらだけで8頭が決まり、その他は登録馬の中から本賞金順で10頭が選ばれます。重賞やOPで権利を取得して直行する馬もいます。主要なクラシック関連のOP以上レースは以下のとおり沢山あります。

↓「東京スポーツ杯」
↓「京都2歳S」

↓「朝日杯」

↓「ラジオNIKKEI杯」「ホープフルS」

↓「ジュニアC」「シンザン記念」
↓「京成杯」
↓「若駒S」

↓「きさらぎ賞」
↓「共同通信杯」

↓「アーリントンC」「すみれS」
↓「弥生賞」

↓「スプリングS」「若葉S」
↓「毎日杯」


「皐月賞」

 そうすると、当然有力馬がここまで直接対決をしないで来ることも多く、どのレース(トライアル)がレベルが高かったのかを把握しなければ皐月賞の予想をすることができません。予想の基本となる、能力比較のスキルが要求されます。

 また、中山コースは主要開催地でありながらローカル並みに直線が短いため前残りが起こりやすいトリッキーなコースです。G1で頭数が多いことから、差し脚で実績を積んできた人気の素質馬が大外を回らされ、直線半ばで脚が鈍るというのは繰り返されてきた皐月賞の歴史です。

 内枠や先行馬有利の考え方は正統派(レースを見る)予想の手法を理解している予想家でないと対応が難しいでしょう。私自身、2002年の皐月賞で学んだつもりが、2006年、2007年と失敗してしまい、本当に難しいと思います。前に行って粘れるかには、能力だけではなく、その馬の個性も絡んできます。過去20年で馬券に絡んだ10番人気以下の馬は、下記のとおり皐月賞では11頭もおり、うち3頭が優勝しています。日本ダービーの8頭、優勝0回と比べて波乱しやすいことが理解できます(ダービーはほとんどの1番人気馬が馬券に絡んでいますね)。

 皐月賞は人気通りに決まらないレースです。以下、過去20年の1~3着の人気をご覧ください。

2011年 4番人気→1番人気→8番人気
2010年 1番人気→6番人気→11番人気
2009年 3番人気→8番人気→4番人気
2008年 7番人気→6番人気→1番人気
2007年 7番人気→15番人気→2番人気
2006年 6番人気→10番人気→2番人気
2005年 1番人気→12番人気→3番人気
2004年 10番人気→1番人気→6番人気
2003年 1番人気→2番人気→3番人気
2002年 15番人気→8番人気→1番人気
2001年 1番人気→3番人気→2番人気
2000年 2番人気→1番人気→13番人気
1999年 5番人気→6番人気→2番人気
1998年 2番人気→3番人気→1番人気
1997年 11番人気→10番人気→12番人気
1996年 4番人気→1番人気→9番人気
1995年 3番人気→4番人気→11番人気
1994年 1番人気→9番人気→6番人気
1993年 3番人気→2番人気→4番人気
1992年 1番人気→4番人気→5番人気

 日本ダービーと比較してみましょう。

2011年 1番人気→10番人気→8番人気
2010年 7番人気→5番人気→1番人気
2009年 2番人気→5番人気→8番人気
2008年 1番人気→12番人気→6番人気
2007年 3番人気→14番人気→4番人気
2006年 1番人気→4番人気→7番人気
2005年 1番人気→2番人気→7番人気
2004年 1番人気→5番人気→3番人気
2003年 1番人気→3番人気→7番人気
2002年 1番人気→3番人気→6番人気
2001年 1番人気→3番人気→11番人気
2000年 3番人気→1番人気→6番人気
1999年 2番人気→1番人気→3番人気
1998年 1番人気→14番人気→15番人気
1997年 6番人気→3番人気→1番人気
1996年 7番人気→1番人気→9番人気
1995年 1番人気→2番人気→8番人気
1994年 1番人気→4番人気→10番人気
1993年 1番人気→2番人気→3番人気
1992年 1番人気→16番人気→5番人気

出現数比較
        皐月賞     ダービー
1番人気   13回(6勝)  18回(13勝)
2番人気   8回(2勝)  5回(2勝)
3番人気   7回(1勝)  9回(2勝)
4~7番人気  16回(6勝)  16回(3勝)
8~9番人気  5回(0勝)  4回(0勝)
10~12番人気 8回(2勝)  4回(0勝)
13番人気以下 3回(1勝)  4回(0勝)

 しかし、波乱しやすいということは、穴馬を見つけて的中できれば超高配当の馬券を取ることもできます。競馬ファンにとっても夢の大きいレースと考えられます。

 皐月賞予想家と認知されるくらいに毎年良い予想がお送りできるように努力したいと思っています。

(初稿2008.04.28 「2008年皐月賞予想特大号!」レポート文を加工修正し掲載、最終更新2012.3.31)