大阪に住んでいる友達が来月の5月に結婚する。彼とは研修時代に知り合って以来、競馬仲間として、研修中は皐月賞、NHKマイル、オークスを見に行ったり、その後もお互いに遠征し合ったりする仲である。知り合った当時、すでに彼の競馬熱は全盛期をすぎ、賭け金も相当落ちたと聞いていたが、皐月賞でアグネスタキオン-ジャングルポケットの馬連に4万賭け、2002年の宝塚記念前日には梅田のWINSでイダテンの1.2倍の単勝に5万突っ込んで、私たちを驚かせたものだった。
結婚式に出席するスケジュールを話合うために電話をしていたところ、その彼が「実は、今年はまだ一回も競馬をしてないんだ」と言った。前々から彼女から止めるよう言われているという微笑ましい話は聞いていたが、それにはちょっと驚いた。いや、去年までの自分も今の時期なら弥生賞で初めて賭けた位で驚くことではないが、彼が、という点で驚いたのである(笑)
いろいろな人に競馬の話をすると、「昔やったなぁ」と遠い目をして当時活躍した馬の名前を聞くことがあるが、それを思い出した。私はデータ派から競馬に入ったから、有名な馬なら名前と勝ったレースくらいは覚えていて多少話をすることができるが、そういう人が次に聞くのは、最近はどんな馬が活躍しているか等であり、今は全く競馬を見ていない状態になっていることが多い。
彼もそうなってしまわないかと思うと寂しい気分になり、私自身にもそういう時がやってくるのだろうかとも思った。毎日競馬展望ばかりの自分が言うのも説得力ないかもしれないが(苦笑)、今のところ競馬をやめることは、それほど難しいことではないと思っている。もしも競馬話のできる職場の先輩、友達が近くにいなくなって、このホームページの運営に気力がなくなったとすれば、やめてもいいのではないかと。
そんなことを考えていると、一般的によく警告されているギャンブル中毒、人の一生を狂わすほどの依存性が競馬にあるのか疑問に思えてきたのである。もちろん、自分の財力を超える額をぶちこむようなやり方(モンテカルロ系は注意)をやっていればリスクはとてつもなく大きなものになるが、競馬を知れば知るほど、競馬ファンになるほど、そこまでのことはできないようにも思うのだ。
ギャンブル依存症に関わるキーワードについてYahoo!でページ検索してみたところ、結果は以下のとおりだった(2005年4月2日)。
ギャンブル依存症…8898件、ギャンブル中毒…600件
競馬依存症…52件、競馬中毒…137件
パチンコ依存症…15059件、パチンコ中毒…822件
(ただし、パチンコにはパチスロ、スロットを含むものとする。以下文も同様)
競馬に限った依存症及び中毒について書かれたページは少ないことがわかる。更に、競馬のページの内容を見ていくと、競馬依存症という言葉を、そのページ製作者が自嘲気味に使っていたり、依存症診断といったコーナーとして使われていたりするものばかりで、それを病気として扱う深刻なページは見当たらない。パチンコ依存症を検索した場合、依存症改善を相談する集会所的サイトやそういった施設のサイトまである(例えば、「パチンコは麻薬」http://www.geocities.jp/pachimaya/ 、「join in the laughter~一緒に笑おうよ~」http://www.geocities.co.jp/SweetHome/5046/ 、「強迫的ギャンブル回復施設ワンデーポート」http://www5f.biglobe.ne.jp/~onedayport/ など)。また、「危険なギャンブル」というキーワードで検索をかけてみたところ、一番上に表示されたサイトはずばり「パチンコを考える」だった。ギャンブル依存症よりパチンコ依存症のほうが、ヒット数が多いのも特筆すべきものだ。それと比較すると、競馬は思いのほか深刻な依存や中毒とは縁が薄いように見える。
また、ギャンブル依存症について書かれているページを見ていくと、ギャンブルを「パチンコ、スロット、競馬、競輪、競艇など」と一括りにして論じているものが多く(「増えるギャンブル依存症」、「ギャンブル依存について」)、その中で例に挙げられている話のほとんどはパチンコ依存が中心である。続くのが、カジノや麻雀。競馬ももちろん名を連ねるが、その場合、競馬だけではなくパチンコもやっているケースが多い印象である。平日パチンコ、土日競馬で勝てるほど両者とも甘くはないと私は思うのだが、それこそ依存症なのだからしょうがないのかもしれない。
依存症、中毒に関わる大きなファクターは、いつでもやろうと思えばできる、ということではなかろうか。ほぼ毎日できるパチンコ・パチスロ・カジノなど(競輪・競艇もほぼ毎日できるようだし、メンバーが揃えば麻雀もできそうだ)(「第1グループ」とする)、そして、週に1,2日しかできない競馬、toto、ロトなど(ただし競馬は地方のものも含めるとほぼ毎日になるので両方やる場合第1グループと見なす)(「第2グループ」とする)、更に期間の長い宝くじ(「第3グループ」とする)、と期間が広くなるほど中毒性は薄れると容易に想像がつく。
中毒性の高いものとしては、第1グループのギャンブルの他に麻薬やタバコもあるが、私はいずれもほとんど経験がない(麻薬は全くないです)。ただ、想像するならば、TVゲームで近いものを経験したことがある。一番はまったのはRPGよりもSLGで、「信長の野望武将風雲録」「三国志Ⅲ」などはやめたくてもやめられず、頭がクラっとくるまでやった経験がある。セーブ後に終了にしても、そのままコンピューターだけで続けさせて眺めてしまうとか(笑)あの烈火の如き衝動を想像すると、その苦痛を多少なりとも理解することができる。借金してまでお金を注ぎ込んでしまい、しかも何時間もの時を失い大敗した時の後悔、そしてその分を取り返してやりたいと思って、それを繰り返す心理というのは、やはり病的である。
しかしながら、自分でも不思議なものだが、競馬でそれと似たような苦痛を味わったことはない。このページを見られている貴方はどうだろうか? 私は買うレースを長い間ほぼGIに絞ってきたし、今でも馬券を買うレースは若駒戦未勝利戦以上の厳選レースで、一日に何レースも大きな勝負をすることがなく、負けたら負けたで、それを認識(反省)して次回の賭け金をコントロールでき、後で自己嫌悪に陥るほど後悔することは少ない。その経験から、自分をコントロールするための時間的余裕が、依存による破滅を遠ざけるのに重要なのだと思うのだ。この時間的余裕があれば、借金してまで賭けるほど熱が入ることはないのではないか。
中央競馬だけやっていて、借金してまで注ぎ込んでしまう人はどれくらいいるのだろうか。もし、パチンコ等の他のギャンブル(特に第1グループ)を同時にやっていて、借金して苦しんでいるという人は、一旦、ひとつに絞るのが良いと思う。その上で競馬を選ぶのであれば、あくまで私の経験上だが、競馬で儲けるために平日にも勉強しておくべきことはたくさんあり、パチンコ等で時間を潰している暇などない。競馬以外を選ばれるのであれば、それはそれで結構。パチスロで儲けることを考えれば、競馬をする余裕はないだろう。
深刻に考えるべきギャンブル依存症はパチンコ等の第1グループに属するギャンブルではないかと考えている。だから、カジノをお台場に作るという案が、同じギャンブルである競馬への理解につながると考えるのは間違い。逆に、ギャンブルは危険と思わせる話題が多くなり、競馬への警戒心も高まるだろう。今でも新聞沙汰の悪い話はたまにあるが、一番連想されるのは、赤ちゃんを車に置き去りにしたままパチンコに熱中し、熱中症で死なせてしまったという事故だろう(先日もどこかの教員がパチンコをしている間に成績等の資料を盗難されたという話があった)。もちろん、これらも多くのパチンカーの中ではごく一部だろうが、それがギャンブルをしない多くの人たちの競馬を含むギャンブルへの悪い先入観を作っているのは間違いないと思う。
もちろん競馬依存症はない、競馬中毒がないとは言っているのではない。依存は周期性や継続性(習慣)も大きなファクターであるから、依存症というのはあると思われる。しかしながら、それは携帯電話依存やインターネット依存などと並べられるもので、家庭や人生を崩壊させるほどのインパクトにつながることは比較的少ない。もちろん、そのひと個人の人間性に影響を与えることはあるので、程度の問題でもある。例えば、仕事中やデート中にも競馬のことを考えてしまうとか、週末は狙いのレースがある日は馬券を買わずにはいられないとか、自分の時間のある程度を競馬のために使っているとか。これらは全て、今の自分に見に覚えがあることなのだが(苦笑)
先日、私の巡回先ブログの管理人の方が、お見合いに先立って趣味の欄に「競馬」を書くかどうか迷ったという話をしていたが、このあたりの何とも言えないもどかしさは共感できる。自分の稼いだ金の範囲で、法的にも認められた競馬という娯楽を楽しんでいるだけなのに、それだからと居直れず、世間体を配慮してしまう自分がいる。
競馬の楽しさを多くの人に理解してもらいたい。でも、競馬だけの人生が楽しいとも思わないし、馬券で儲けるにはそれなりの努力が必要だから、あまり気軽にそれを言うのも違うような気がしている。
今回考えたところでは、今現在競馬やギャンブルにどっぷり浸かっている方には、「借金してまで競馬はやってほしくない」ということ、「他のギャンブル(特にパチンコ系第1グループ)を一緒にやらないほうがいいよ」ということを推奨したい。後者については、私自身がパチンコを全く面白いと思わなかった人間なので(時間がもったいない、うるさい、煙たい、換金が正々堂々とできない、いろいろ機種はあるが結局中身は同じだろう等)、自分の稼いだ金の範囲で娯楽として楽しまれている方には問題ないかもしれない。
また、自分自身も競馬の比重が高まってきたと感じるので、最初に話した「競馬をやめることは、それほど難しいことではない」を確認するために、少し休みをいただきたいと思う。とりあえずの期間は、ダービー翌週から去年2歳戦の予想を開始したダリア賞までの約3ヶ月間(エメラルドデータのある宝塚記念のHP予想、天落馬大会関係、その他競馬仲間から誘われた場合を除く)を考えている。競馬もホームページもしばし忘れて、生活習慣を見直すべきところは見直しながら、他の趣味を楽しみたい。
これから、桜花賞、皐月賞、NHKマイルC、オークス、ダービーとこれまで見てきた若駒戦の集大成となる大一番が続きます。悔いのない予想をしたいと思いますのでご支援ください。
(2005年4月2日筆)