表題は、2011年のダービーにおける回顧の要約です。

3歳戦は能力ベースの天星指数を使っているだけでは理解し難い結果が多くあり、成績としても例年のように不調に陥るため、先般、シーズンをシンザン記念までとさせて頂いたところです。

この背景において、天星指数の要である「短期的能力固定」が3歳戦では通用しなくなってくることを感じていたのですが、今年のダービーでその正しさが明確になったと考えます。

ダービーを完勝したオルフェーヴルは、この世代の指数上位馬ではありましたが、スプリングSまでは他馬とそう変わらない位置にいました。例えば、差しの効く阪神1800mのスプリングSでベルシャザールとの着差は0.1秒でしたが、ダービーでは1.4秒差にまで広がっています。不良馬場によって巧拙の差が出たと考えられもしますが、他馬との相対的な評価からしても、オルフェーヴルが成長して強くなったと考えるのが妥当でしょう。

2008年の日本ダービーも、ディープスカイの成長ぶりに半信半疑で向かい合ったことを思い出します。ディープスカイは初勝利まで6戦も要し、2月時点でも東京競馬場の平場の条件戦で敗れるなど、一歩物足りない追い込み馬でした。それが、毎日杯やNHKマイルCで一気に素質を開花させ、ダービーでは内先行馬が有利な馬場条件のところ、後方から大外を回して勝ち切ってしまいました。

過去に遡れば、2004年のキングカメハメハもこの時期に一気に強くなった馬だと思います。それぞれ、現地で観戦していて「なんだ、凄い強いじゃないか!」と驚きました。

これらの例を見るだけで、この時期に成長をする馬がいることがわかりますが、成長するかしないかは、指数であれば急に上がってきたという視点から多少注意できる一方、オルフェーヴルのphotoパドックは歴代のダービー馬と比べても遜色ないフォルムをしており、馬体や走法で分析できたりするのかもしれません。

それから、もうひとつ今回のダービー回顧で重要となるのが、ウインバリアシオンとベルシャザールの好走でしょう。ベルシャザールについては、前走の大敗が調教後馬体重の大幅減から想像される体調不良による影響(一昨年のロジユニヴァースの皐月賞惨敗→ダービー勝利と同様の巻き返し)であり、今回は馬体をしっかり戻してきたこと、不良馬場も適性に合ったことが好走理由と考えられます。

一方、ウインバリアシオンについては、最近の成績はいまいちであったことから、急激な成長と見ることもできますし、元々野路菊Sを中弛み超スローの展開で快勝し、素質を感じさせていたので、体調が良くなってきたと考えることもできます。また、馬場も向いたのかもしれません(ハーツクライ産駒は傾向が見えにくい…)。プロの目では、当日のパドックの評価が高かったという情報もありますし、ピックアップするには総合的な視点が必要だったと思われます。

3歳戦の、特に2月以降になりますと、年末の重賞を使っていた馬や賞金を一定程度稼いでいた馬たちがトライアルレースを使って本番を目指すなど、休み明けから戦線に復帰することが多くなります。

中には、完全に競走意欲を喪失してしまったリベルタスのように、精神面で終わってしまう馬もいますし、精神面かは不明も、何らかの不調により大敗してしまったリフトザウイングスや、成長が止まり、2歳時ほどの活躍を出来ないオールアズワンのような馬もいます。

クラシックという目標となる日程が決まっている以上、それに照準を合わせた体調管理をしていかなければならず、調教師の手腕にも影響を受けるでしょうし、馬自身がどうしても調子が上がってこないということが十分にありえます。

また、クラスごとに馬の力も拮抗してくるため、能力よりも調子が結果につながる可能性が高まりますし、自分より強い馬と戦って敗れ、走ることを嫌いになってしまう繊細な馬(ムラ馬は気性面や精神的な影響が大きい)もいます。

そのように考えれば、クラシック戦線が中心となる3歳戦において、それぞれの馬の調子(心身状態)を見る技術を持つか否かが、馬券収支に与える影響は大きいものと想像できます。

「2歳戦は絶対能力と完成度の戦い、3歳戦は心身状態と成長力の戦い」
これを第八期のテーマとし、2歳時の公式戦ではこれまで通りの予想を展開しつつ、3歳戦まで通して、心身状態や成長力を見極める技術(走法や馬体)に着目していきたいと考えています。

2011.06.01