「データアート美術館以前<2>」

さて前回の続きです。
2000年の私は、本屋に並んでいる必勝本の類の中には、馬券必勝法につながる洞察を得られるものがもしかしたらあるのではないかと思い、前回お話したような新聞の予想家の印の組み合わせにも手を出しましたし、一般的にモンテカルロ法と呼ばれるものも試してみました。(モンテカルロ法にも厳密に言えばいろいろな計算方法があって、それぞれに理論名称が異なるのですが、ここではモンテカルロ法とまとめさせて頂きます)。

モンテカルロ法とは、ある条件に合致した馬券を買い、外れたら次の対象レースの購入金額を上昇させ、最初に負けた分+利益が出るように購入することをひたすら続けていく馬券術です。すなわち、資金がパンクしない限り負けない理論ということになります。

自分で考案したモンテカルロ法「馬策」は、以下のロジックで馬券を購入するものでした。

1.2Rまでに馬券売り場に行く(20000円持参の上)
2.1Rの配当を確認して1番人気が勝ったか確認する。(不明なら単勝200円台以下かどうかで判断)
3.1番人気が勝ってたら2Rは観戦のみ。負けていれば2Rのオッズを見て参戦。
4.2Rを観戦して1番人気が負けたら3Rから参戦。勝ってしまったら2回観戦。
5.3、4Rを観戦して1番人気が連敗したら5Rから参戦。1勝でもした場合は黙って帰宅。
6.参戦することになったら、買うのは単勝1番人気。
  掛け金=(5000+累計損失)÷(オッズ-1)
  ただしオッズが1.4以下または5以上のときは回避。(回避レースで1番人気が勝ったら次のレースは観戦)
  また、オッズは締め切り直前に下がるので3分前オッズ-0.2くらいで計算するとよい。
7.当たったら撤収、負けたら続行。
8.3連敗することは少ないが、そうなったらあきらめて帰ること。
 
この攻略法を支えている考え方は、次の通りです。
A.1番人気勝利の出現率は、毎年36.5%でほぼ一定していること。
  それなら、単純計算による1番人気の連敗可能性は、
  2連敗・・・40.3%
  3連敗・・・25.6%
  4連敗・・・16.3% (←馬策のデッドライン:負けたのを見てから開始するから+3連敗はここ)
  5連敗・・・10.3%
  6連敗・・・6.6%
  と考えられます。
B.30日分の1番人気勝利の出現回数は、
  0勝・・・1回  1勝・・・3回  2勝・・・8回  3勝・・・17回  4勝・・・25回  5勝・・・22回  6勝・・・9回  7勝・・・6回  8勝・・・0回
  でした(当時調べたもの)。
  大抵、各開催地別個で考えて1日に1番人気馬が3~5勝はしているということです。
C.1Rで1番人気馬が負けたとき、4Rまでに1番人気が勝つ確率は、
  その日、1番人気の総合勝利数が1回のみなら・・・72.7%
  〃2回であれば・・・50.9%
  〃3回・・・33.9%
  〃4回・・・21.2%
  〃5回・・・12.1%
  〃6回・・・6.1%
  Bによれば、普通は3~5回勝つわけですから、Aとも合わせて負ける確率は15~25%といったところになります。
D.75~85%で5000円を増やすことができ、負けても20000円程度。

これなら勝てる!と思って始めてみたんですが、これがなかなかうまくいきません。
賭けるときに限って連敗して、だんだん冷静な頭を維持できなくなってくるのです(額が大きくなってくるととっても怖いです)。
後半となると大きなリスクを冒して5000円しかプラスにならないのも、割が合っていない感じがしてきます。
一回3連敗して帰ればいいものを4戦目に突入してしまった日があり(10.3%に惑わされた)、ドボン。

自分には向いてないと思い、以来この方法は使っていません。モンテカルロ法の一番の課題は、理論上連敗する可能性は低く見積もられるのですが、そもそも1番人気が勝つ確率(36.5%)は年間のレースを総合計しているかなりマクロなデータですから、次のレースを結局は63.5%で負けるという恐怖に苛まれることです。いくらこつこつプラスを作っても一回のドボンで帳消しになってしまうというのは精神的に良くないです。

なお、当時の170日分の集計では、勝利110回、敗北38回、帰宅22回、勝率74%という記録が残っているので、当時の予想理論に可能性が全くないというわけじゃないんですが、今の予想技術を持てば、モンテカルロ法に頼る必要はないことをご理解頂けますよね。馬を見る予想のほうが絶対面白いですし^^

当時は毎週競馬をすることに疑問や抵抗を感じていたため、一般化した予想法では通用しないことを悟り、平場のレースを一旦辞めることにしました。予想の対象を絞り、G1に特化したデータに集中する方向へ行きました。
その2年後、HP「馬流天星G1データアート美術館」が始まります。

2008.10.09